力尽きるまで運営、「ぐれんらがん」のファンイラストをのっけているブログです。ろしうがじわじわ増えます。詳細は右メニュー「ごあんない」をご参照くださいませ。
Posted by - 2008.01.06,Sun
カウンター5000回転、ありがとうございました!絵。
nanashiさまへ、「ヴィラルとアンネ」
新年にそぐわない感じの、暗い小話付きです。
※死にネタ含んでおります。
※アンネとか、獣人の体温うんぬん、超妄想な感じで…。
おだやかに草を揺らす風、心をやわらかに包む笑い声、あたたかな家族のぬくもり。
甘ったるい夢は、あの一時に見た限りのはず。
現実であるはずがない。
あの時と同じように、草の擦れる音、まぶたを透かす橙々の日の光。
これは、外で慣れない読書をしている内、うたた寝をしてしまったから。
昼下がりの公園には、子供の元気に遊ぶ声が、そこかしこに溢れている。
あの夢の状況と、酷似していたからか。
二度と見ることはないだろうと思っていた、甘やかな夢のことをまた思い出し、すぐに打ち消そうとヴィラルは努めた。
だが、なぜか我が子を抱き上げた時のぬくもりは、まだ身体に残っていた。
ただあの時と違っていたのは、目の前にある、困ったように下がった眉と、ふわふわした金髪。
「…なんだ、貴様は…」
ヴィラルの身体の上に覆い被さっていたのは、小さな女の子。
どすを効かせた低い声にひるむ様子もなく、ただじぃっと、ヴィラルを見つめている。
「あら、あら、すみません…お兄ちゃんにだめよ、アンネ。ほら、パパが呼んでいるわよ」
母親と思しき女性が、二人のもとへ駆け寄った。
ヴィラルからひき離された女の子は、ときどき立ち止まり、振り返りながらも、向こうにいる父親の所へ駆けていった。
「あの子の飼っていた犬が死んでしまって…寂しいのか、誰彼かまわずひっつきたがるんです。本当にごめんなさ…、あ、」
「別に、構わん」
ヴィラルは言葉少なに、立ち上がると、さっさとその場を後にした。
「誰彼かまわずってわけじゃないわ、あなた、あの子に似ていたの」
「あの子?」
「私の飼っていた犬」
「…獣というだけで、ひとくくりにするな」
「まだ小さかったからよくわからなかったんだけどね、苦しそうに鳴くの。どんなにさすっても、苦しそうに…。
最後、呼吸が浅くなって…動かなくなって。どんどん、身体が冷たくなっていくの。
だから私、あの子をずっと抱き締めていた。
寒くないように、わたしがあたためてあげよう、って。
あなたの身体も、とても冷たくて」
「…獣人ならば、さしてめずらしくもない事だ」
「ふしぎね、でも今はあなたの手、とてもあたたかいの」
_____それは、今おまえの手が、俺よりも冷たいからだ。
見知った顔は、ほとんど世を去った。
螺旋王から賜った不死の身体は、老いることも、朽ちることもない。
昼下がりの公園でひっついてきた子供_____アンネも、老い、今しずかに生の終りを迎えようとしている。
アンネは、同僚であるダヤッカの娘だった。
誰かの結婚式、あるいは葬儀などで、何かと顔を合わせる機会が多くなった。
泥だらけになって遊び回り、擦り傷だらけになっていたかと思えば、あっという間に女性らしくなり。
無邪気にじゃれついてきた小さな子供が、大人びた口調でヴィラルをからかう娘となった。
そうして、アンネの成長を、つぶさに見守ってきた。
あの夢の、我が子を見るように。
_____自分が、奴らが、救いあげた地球の運命を、永遠に見続ける。
未だ、戦いで失った同胞の事を思い出しても、胸がきりりと締めつけられる。
悠久の時を過ごすには、あまりにも重い感情。
別れが訪れ、自分だけが残されることは、わかりきっている。
自分は、見続けるだけ。
深入りは、しない方がいい。
成長するにつれ、アンネのヴィラルを見つめる視線が、子供の頃とは違う意味を込めたものとなっていった事を、知っていた。
だが、気付かないふりをした。
昔ながらの暖炉で、薪がパチパチとはぜる音が、静かに部屋を満たす。
抱き締めているだけで死にゆく者に体温が移ろうなどと、必要以上の知識を与えられず無知だった昔ならいざ知らず、映像や書物が溢れている今、信じるのはそれこそ餓鬼くらいしかいない。
だが、今は、少しでもそうあればいいと。
「アンネ」
ゆるやかに失われゆく体温に、少しでも熱が伝わればいい、と。
やわらかな暖炉の火の光の傍ら、出会ったあの頃よりはだいぶ皺の刻まれたアンネの手を、ヴィラルの大きなごつごつと固い手が、握りしめた。
<終>
※アンネとか、獣人の体温うんぬん、超妄想な感じで…。
おだやかに草を揺らす風、心をやわらかに包む笑い声、あたたかな家族のぬくもり。
甘ったるい夢は、あの一時に見た限りのはず。
現実であるはずがない。
あの時と同じように、草の擦れる音、まぶたを透かす橙々の日の光。
これは、外で慣れない読書をしている内、うたた寝をしてしまったから。
昼下がりの公園には、子供の元気に遊ぶ声が、そこかしこに溢れている。
あの夢の状況と、酷似していたからか。
二度と見ることはないだろうと思っていた、甘やかな夢のことをまた思い出し、すぐに打ち消そうとヴィラルは努めた。
だが、なぜか我が子を抱き上げた時のぬくもりは、まだ身体に残っていた。
ただあの時と違っていたのは、目の前にある、困ったように下がった眉と、ふわふわした金髪。
「…なんだ、貴様は…」
ヴィラルの身体の上に覆い被さっていたのは、小さな女の子。
どすを効かせた低い声にひるむ様子もなく、ただじぃっと、ヴィラルを見つめている。
「あら、あら、すみません…お兄ちゃんにだめよ、アンネ。ほら、パパが呼んでいるわよ」
母親と思しき女性が、二人のもとへ駆け寄った。
ヴィラルからひき離された女の子は、ときどき立ち止まり、振り返りながらも、向こうにいる父親の所へ駆けていった。
「あの子の飼っていた犬が死んでしまって…寂しいのか、誰彼かまわずひっつきたがるんです。本当にごめんなさ…、あ、」
「別に、構わん」
ヴィラルは言葉少なに、立ち上がると、さっさとその場を後にした。
「誰彼かまわずってわけじゃないわ、あなた、あの子に似ていたの」
「あの子?」
「私の飼っていた犬」
「…獣というだけで、ひとくくりにするな」
「まだ小さかったからよくわからなかったんだけどね、苦しそうに鳴くの。どんなにさすっても、苦しそうに…。
最後、呼吸が浅くなって…動かなくなって。どんどん、身体が冷たくなっていくの。
だから私、あの子をずっと抱き締めていた。
寒くないように、わたしがあたためてあげよう、って。
あなたの身体も、とても冷たくて」
「…獣人ならば、さしてめずらしくもない事だ」
「ふしぎね、でも今はあなたの手、とてもあたたかいの」
_____それは、今おまえの手が、俺よりも冷たいからだ。
見知った顔は、ほとんど世を去った。
螺旋王から賜った不死の身体は、老いることも、朽ちることもない。
昼下がりの公園でひっついてきた子供_____アンネも、老い、今しずかに生の終りを迎えようとしている。
アンネは、同僚であるダヤッカの娘だった。
誰かの結婚式、あるいは葬儀などで、何かと顔を合わせる機会が多くなった。
泥だらけになって遊び回り、擦り傷だらけになっていたかと思えば、あっという間に女性らしくなり。
無邪気にじゃれついてきた小さな子供が、大人びた口調でヴィラルをからかう娘となった。
そうして、アンネの成長を、つぶさに見守ってきた。
あの夢の、我が子を見るように。
_____自分が、奴らが、救いあげた地球の運命を、永遠に見続ける。
未だ、戦いで失った同胞の事を思い出しても、胸がきりりと締めつけられる。
悠久の時を過ごすには、あまりにも重い感情。
別れが訪れ、自分だけが残されることは、わかりきっている。
自分は、見続けるだけ。
深入りは、しない方がいい。
成長するにつれ、アンネのヴィラルを見つめる視線が、子供の頃とは違う意味を込めたものとなっていった事を、知っていた。
だが、気付かないふりをした。
昔ながらの暖炉で、薪がパチパチとはぜる音が、静かに部屋を満たす。
抱き締めているだけで死にゆく者に体温が移ろうなどと、必要以上の知識を与えられず無知だった昔ならいざ知らず、映像や書物が溢れている今、信じるのはそれこそ餓鬼くらいしかいない。
だが、今は、少しでもそうあればいいと。
「アンネ」
ゆるやかに失われゆく体温に、少しでも熱が伝わればいい、と。
やわらかな暖炉の火の光の傍ら、出会ったあの頃よりはだいぶ皺の刻まれたアンネの手を、ヴィラルの大きなごつごつと固い手が、握りしめた。
<終>
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